第二次世界大戦後のフィンランド。帰還兵のトウコ・ラークソネンは、鍵をかけた自室でスケッチブックに向かい、戦場で出会った男たちの逞しい姿を描き続ける日々を送っていた。当時のフィンランドで同性愛は法律で禁止されていたため、トウコは警察の取り締まりに怯えながら夜の公園でセックスの相手を探すか、自分でファンタジーを作り出す以外に、欲望を発散させる方法がなかった。そんなある日、トウコは同居する妹のカイヤから、広告の絵を描く仕事を紹介される。トウコはすぐに才能を発揮し、昼間は広告、夜は自分の作品に没頭する暮らしが始まった。当初からのモチーフである肉体労働者や兵士に加えて、流行りのバイカーファッションなどを取り入れたトウコの作品はますます進化し、アンダーグラウンドの同性愛者コミュニティで支持されるようになる。その中には、後にトウコの生涯の恋人となるダンサーのヴェリ・マキネンも含まれていた。そして1957年、トウコがアメリカのフィットネス雑誌に送った絵が表紙を飾ったことで、転機が訪れる。「トム・オブ・フィンランド」の作家名で掲載されたその絵は、社会がゲイの男性たちに押し付けてきた、従来のなよなよしたひ弱なイメージとはまったく異なり、数多くの当事者が理想とするポジティブな男性像そのものだった。やがてトム・オブ・フィンランドの絵に共鳴する人々の輪は国境を超えて広がり、1978年、トウコは支持者の一人であるダグからアメリカに招待される。サンフランシスコとニューヨークで行われた展覧会はいずれも大成功し、トウコはかつてないほどの開放感を味わう。その後、フィンランドに帰国したトウコは、自由に生きる権利についてヴェリに熱弁を振るうが、まもなくしてヴェリは病気で帰らぬ人となる。数年後のアメリカ。エイズが流行し、同性愛者に対するバッシングが激化する中、ゲイカルチャーを先導する立場となったトム・オブ・フィンランドことトウコは、堂々とした姿で仲間の前に現れ、自由とプライドの意味を問いかける――。
■公式サイト
トム・オブ・フィンランド
(C) Helsinki-filmi Oy, 2017
2019年8月2日(金)公開